センター長のあいさつ

世界規模での高齢化の進展と医療需要の拡大により、世界の医療機器市場は今後ますます拡大し、成長産業として期待されています。日本の医療機器市場は、米国に次いで世界第2位の規模となっていますが、国産医療機器は特に治療用の分野で競争力を獲得できず、長らく輸入超過の状態が続いています。2007年「経済財政改革の基本方針2007(骨太の方針07)」に「革新的医薬品・医療機器創出のための5カ年戦略」の推進が盛り込まれて以降、医薬品医療機器総合機構(PMDA)の強化や日本医療研究開発機構(AMED)の設立など、医療機器開発の環境は急速に整備されてきましたが、医療機器の輸入超過の是正は停滞しており、国産医療機器開発を加速するための更なる対策が必要となっています。

一方で国民の健康ニーズを満たし、高齢社会を支える大きな柱の一つが新規医療機器の創出であることに疑う余地はありません。医療機器開発には国民の健康ニーズの実現と国内経済を牽引するための成長産業としての二つの使命が与えられており、その実現のため2016年「国民が受ける医療の質の向上のための医療機器の研究開発および普及の促進に関する基本計画」が閣議決定され、施策として最先端診断・治療機器技術開発等の推進やイノベーションを創出するリーダー人材の育成が掲げられています。

神戸大学では、革新的医療機器開発を加速することを目的として、2015年に学内横断的研究組織である神戸大学先端融合研究環の中に、工学研究科を中心としたバイオマテリアル・メディカルエンジニアリング研究プロジェクトおよび医学研究科を中心とした医療デバイス創製医工学研究プロジェクトを立ち上げました。2017年には、部局内センターとしてそれぞれの研究科に医療デバイス創製医工学研究センターおよび医工探索創成センターを設立しました。さらに、神戸国際交流財団と神戸医療産業都市内に「統合型医療機器研究開発・創出拠点」を開設し、革新的医療機器開発が可能な環境整備を着実に進めています。医学部附属病院においては、2017年に「国際がん医療・研究センター」を開院し、臨床研究推進センター(分院)を設置することにより、神戸医療産業都市内で臨床試験が実施できる場を設けることができました。

未来医工研究開発センターは、以上のような学内外の動きを踏まえ、医学研究科、工学研究科が中心となって取り組んできたこれまでの分野融合型の研究等の成果を加速しつつ、医学と工学のシームレスな融合の実現を目指して、2019年4月に全学基幹研究組織の一つとして開設されました。

また本センターは、ポートアイランドを中心に形成された神戸医療産業都市内を拠点とすることで、医学部付属「国際がん医療・研究センター」や神戸医療産業都市内の企業、研究施設と緊密に連携し、本学の神戸イノベーション・アイランド構想を加速化させる役割も担っています。

本センターを医療機器開発に向けた実践の場とすることにより、将来を担う学生諸君や若手研究者、技術者の活動を支援し、わが国発の医療機器がグローバルに発展することへ注力します。

ご支援、ご協力をよろしくお願い致します。


未来医工学研究開発センター
センター長
向井 敏司

センターの活動概要

医工連携を推進し、医療機器開発を加速するためには環境整備と人材育成が両輪となります。神戸大学では先端融合研究環や医学研究科及び工学研究科の各部局内センターで一定の環境整備を行い、医学、工学間の意思の疎通、風通しは非常に良好となっておりますが、ニーズを検証し、医療機器の概念創出までの医療機器開発でもっとも創造性を必要とする開発フェーズを担う場所とその創造を支援するスタッフが開発環境の中で決定的に不足しています。

未来医工学研究開発センターは、スピーディーな意思決定を行える基幹研究推進組織として、産(医療機器製造販売企業 等)および官(PMDA等)を巻き込み、この不足するピースを補うことで医工学を完全にシームレスに融合し、複数分野の研究者が協働し医療機器のニーズ探索から事業化戦略までを一貫して実施可能な環境構築を推進します。

本センターは、医学部付属「国際がん医療・研究センター」の内部に拠点を設け、新しい医療機器の開発研究を促進します。新たな取り組みとして設立された「メディカルデバイス工房」では、工学系、医学系はじめ複数の学域に所属する学生が、工学系研究者とともに、医療現場の医師、医学系研究者や医療機器開発に関連する企業の技術者、研究者の方々と、face-to-faceでラウンドテーブルを囲み、プロトタイプのものづくりを実践します。

現在、日本の医療機器開発で最も不足しているのは医学又は工学の基盤を持ち、知財関連などの知識を有して、ニーズの解決策を探索し、医療機器としてプロトタイプに昇華させるメディカルデバイスプロデューサー(MDP)です。本センターでは医療デバイスの開発および研究だけではなく、次世代の医療機器をプロデュースできる人材として、開発チームのリーダーとしてのMDPの養成にも力を注いでいます。

未来医工学研究開発センターはオープン・イノベーション方式を採用しています。神戸市では、ポートアイランドを中心に神戸医療産業都市が形成され、地域の産学官連携拠点が構築されています。ポートアイランドには、「国際がん医療・研究センター」が統合型医療機器開発・創出拠点に隣接して設置されており、その隣には複数の医療機器関連企業が入居している国際医療開発センターがあります。本センターはこれらの隣接施設と連携することで、医療機器の開発、性能検証ならびに実証を有機的に実施することが可能です。